ウソつきより愛をこめて
第四章 嫉妬とジレンマ
十二月に入ると、朝の冷え込みが一層厳しさを増してくる。
子供の体温は大人よりも高い。
ただ可愛いだけでなく、湯たんぽ並の活躍をしてくれる寧々は、私にとってはもうなくてはならない存在だ。
「…うわっ、なんか雪降ってる。どおりで寒いわけだ」
窓から外を覗くと、道路にうっすらと白く雪が積もっている。
リビングのエアコンの風速を最大にすると、私は一目散にベッドの中に舞い戻っていた。
「…あれ?」
毛布にくるまっていたはずの私の湯たんぽ…もとい愛娘の姿がどこにも見当たらない。
「寧々?おーい。どこに行ったのー?」
私は頭から毛布を被ったまま、部屋の中を見渡す。
「ちょっとー、ほんとにどこ行ったの?」
「ママっ!ママーっ!!」
「ん?」
寧々のやたら興奮した声が、壁を一枚隔てたような場所から聞こえて来る。
あ……!
ふと足元に感じた冷気は、ベランダの方から続いていた。
「ねー見てっ」
「ちょっとバカ!裸足でなにやってんの!」
寧々はなぜか嬉しそうに、ベランダの手すりに積もった雪を指差している。
「しょーちゃんだぁ!」
「…え?…ぎゃぁあっ!!」