ウソつきより愛をこめて
「…あー…。実家の兄貴に、子供が3人いるからな。高校の時からそいつらの面倒みてたし、結構小さい子の扱いには慣れてる。…ていうか好きなんだよ、子供が。今も帰省した時は、俺が進んで面倒見てるくらいだし」
「へ、へぇー」
イケメンのくせに子供と戯れるのが好きとか、さすが女にモテる要素が満載だ。
橘マネージャーの家族の話なんて、付き合ってる時には話題にすら出なかったのに。
「……」
いや、むしろ聞きたくても彼にはなにも、聞くことが出来なかった。
ずっと浮気の心配や自分は身体目当ての存在ではないかと不安になって身動きがとれず、雁字搦め(がんじがらめ)になっていたから。
…別れてからこの人のことをよく知るようになるなんて、なんだか皮肉な話だ。
「でも女の子はやっぱり見た目も仕草も可愛いな。うちの兄貴の子はみんな男だし、行動もすげぇ大胆だから」
彼の優しく垂れ下がった目元も見ると、居心地が悪くて少し息苦しくなる。
寧々へ無邪気に笑いかける橘マネージャーの顔は、私を看病してくれたあの日以来、よくこの部屋で見るようになった。
だってここのところほぼ毎日、彼は寧々絡みで理由をつけてうちに来る。
ご飯も作ってくれるし、家事だって、寧々のことだって率先してやってくれるから。
私もなんとなく、この人のことを遠ざけづらくなっていた。