ウソつきより愛をこめて
「な、なんなの…バカじゃないの…っ?」
目の前にあった瞳がこっちが恥ずかしくなるくらい真っ直ぐで、私はふいっと視線を外に逸らした。
別に愛の告白をされているわけでもないのに、顔の表面が熱く反応してしまう。
「ああ。自分でもありえないくらいバカだと思ってる。それでも俺は、お前と結婚したいんだ」
「しないっていってるでしょ。結婚結婚ってしつこいな!」
「お前がうんざりして頷くまで、何度でも言ってやる。覚悟しとけよ」
「……~っ。勝手にすれば」
何なんだ、この人は。
いきなりこんななりふり構わずこられたら、どう対処していいかわからなくなる。
信号待ちで停まっていた車がゆっくりと発進していき、たくさんの光が流れ星のように窓の外を流れて、止まっていた景色を煌びやかなものに変わっていた。
「…知ってる?このイルミネーション一緒に見たカップルは絶対別れるって、そういうジンクスがあること」
悔し紛れにそんなことしか言えなかった。
思い知ればいい。
私たちが結ばれることなんて、これから永遠にないってこと。
「…それは残念だったな。俺たちはカップルじゃないから、離れようがないだろ」
でも橘マネージャーの声はひどく落ち着いていて、揺ぎのない思いがその言葉の端々から伝わってくる。
もうやめて。
これ以上、私の心をかき乱さないで。
一枚も二枚の上手な彼に、私はやっぱり何も言い返せなかった。