ウソつきより愛をこめて
閉店まで、あと三十分。
まだショップの中には、商品を見ているお客様が二人いる。
私はそのうちの一人につきっきりで対応していたから、手の空いているゆりちゃんに商品整理を任せていた。
「あんたちょっと、お店の責任者呼んできなさいよ…!」
その時いきなり上がった怒号に、近くの店舗のスタッフも何事かとこちらに視線を向けている。
私は担当していたお客様に許しを得て、そのお客様と一緒にいるゆりちゃんのそばに急いで駆けつけていた。
「申し訳ございませんお客様。店長の結城と申します。どうされましたか…?」
「どうもこうもないわよ!この服のサイズの在庫がないか聞いたら、確認もしないでぶっきらぼうに“ないです”って言ったのよ?ここは一体、従業員にどういう教育してるわけ!?」
「…え、」
ゆりちゃんはまるで自分は悪くないと言わんばかりに、そっぽを向いている。
「た、大変申し訳ございませんでしたっ!」
私はすぐに、青い顔をしながらお客様に向かって必死に頭を下げていた。
サイズ欠品は本来なら在庫がないで済ませるのではなく、お時間を頂けるのなら客注で対応したり、急いでいるなら類似商品の提案などで解決しなければいけない問題だ。
長年バイトをやってるゆりちゃんなら、そんなこと当たり前のようにわかっているはずなのに…。
「白鷺さん、あなたもきちんとお客様に謝罪して!」
「……」
切迫したこの雰囲気がわからないのだろうか。
ゆりちゃんのあまりの態度の悪さに、私は言葉を失っていた。