ウソつきより愛をこめて
「白鷺さん…!」
「…もういいわ」
お客様の顔には、怒りというよりもう失望に近いものがにじみ出ている。
「お時間をいただければ、明日にでも取り寄せてお客様にご自宅まで直接お届けに…」
「もういいって言ってるでしょ!?こんな店、二度と買いに来ないから!」
私の提案を振り切るようにして、お客様が店をあとにしていく。
残された私はそこにしばらく突っ立ったまま、動くことが出来なかった。
それは販売員が、お客様に一番言われたくない言葉だと思う。
自分の売る大好きな服が、あの人にとっては大嫌いなものになってしまった。
それがただただ悲しくて、態度を改めようとしなかったゆりちゃんを責める力もすぐには湧いてこない。
「あー…めんどくさ。Lサイズしか着れない身体なら、もっと別の店で探せばいいのに」
ゆりちゃんの言葉を聞いた私の心は、氷のように冷たく沈んでいた。
「ゆりちゃん」
「なんですかぁ。あたし今日テンション低いんでぇ、早く帰りたいんですけどぉ」
「今日は明日のセールの準備してもらいたいからちゃんと残って。もしかしたら、橘マネージャーが手伝いに来てくれるかもしれないよ?」
「マジすかぁ!俄然やる気出てきたかもぉ。それを早く言ってくださいよ店長」
悪いのは、ゆりちゃんじゃない。
面倒だからってここまで彼女を甘やかしてきた私が、全部悪いんだ。