ウソつきより愛をこめて
「……!」
驚いて見開いた私の瞳に、彼女のしたたかで意地悪そうな表情が映り込む。
子供って…まさかゆりちゃん、知って…?
「橘マネージャーも優しいから。一人で子供育ててる結城店長に、同情してるだけですからねぇ」
続いた言葉に、私は心底胸を撫で下ろしていた。
知られているかと思った秘密は、私と寧々の関係のことではなかった。
私の口からではなく、彼女の口から橘マネージャーに真実が伝えられるのだけは、絶対あってはならない。
これは全部、自分が撒いた種だから。
最後彼にどれだけ失望されてしまうのか、この目でちゃんと見届けるのが私の役目だ。
「大丈夫、わかってるよ」
「…それならいいんですけどぉ」
あまりにもあっさりと納得した私に、ゆりちゃんは拍子抜けしたような表情を浮かべている。
「じゃあ、お子さんもいるんですから、これからはちゃんと、身の程わきまえてくださいよぉー!」
「それは、どういう意味?」
「そうですねぇ。まず今後一切店長と橘マネージャーのシフトがかぶらないように調整してもらえます?それで、逆にゆりを橘マネージャーのシフトを合わせてほしいんですけど」
「それは…」
「無理なんて言わないでくださいね?自分だって職権乱用して、橘マネージャーと多く一緒にいられるようにシフトを作ったんでしょうから」
勘違いどころか、ひどい妄想だ。
めんどくさいから否定してこなかったツケが、すぐに回ってきてしまった。