ウソつきより愛をこめて
「あのねぇ…ゆりちゃん。いくらなんでも、そんなことできるわけ…」
「じゃないと私、この忙しい時期にここ辞めちゃいますよ?」
「……!」
あまりにもありえないことを言われて、私は絶句した。
今月週五で入ってるゆりちゃんが辞めたりしたら、売り場が完全に回らなくなる。
もちろんそれは、売上にも大きな影響を出してしまうことを暗に示していて…。
「どうしますか?結城店長。売上で今年も一番取りたいんですよね?」
ゆりちゃんは絶対に確信してる。
私が逆らえそうにないことを。
今までそういうことを繰り返して、辞められないようにバイトの子達を繋ぎとめてきたことを。
全然社会のことがわかっていない彼女たちのことなんて、将来どうなろうと何も考えていなかった。
考えていたのは、自分のことだけ。
だから、何をしても怒らなかった。
自分が昔周りにそうされて、すごく嫌だったくせに…。
「店長、早く決めてくださぁい」
「…いいよ」
簡単に頷いた私を見て、ゆりちゃんの表情が一気に明るくなっていく。
「辞めたければ、すぐに辞めてもらっていいよ」
はっきりとその言葉の意味を理解した時、彼女の顔からさっきまでの笑顔が消えていた。