ウソつきより愛をこめて
「…ふっ、う…」
強引に唇を割って入ってきた柔らかい舌に、腰が砕けそうになる快感を覚える。
口内に広がったアルコールの香りに頭がクラクラして、立っていることすらままならない。
いつもそうだった。
強引で、自分本位で、私の話なんて全然聞いてくれなくて。
―――なにか得体のしれない不安を振り払うように、彼は私をただがむしゃらに抱く。
「…やぁ、っ…」
必死で橘マネージャーの胸元を押し返すけど、力が強くてびくともしない。
私の後頭部にまわった彼の手に上を向かされると、その口づけはどんどん深くなる一方だった。
頭の中では本気で抵抗しないとヤバイってわかってるのに、もう足にも指先にも力が入らない。
二年ぶりに感じたその匂いも感触も、たまらなく懐かしく感じて。
「…エリカ…」
下の名前で呼ばれることが嫌じゃなくなってることに、私はただただ困惑した。
「ひ、ぁっ…」
形のいい唇が私の耳たぶに近づき、何度もそこを甘噛みしてくる。
火傷しそうなくらいに熱い吐息が降り注ぐ度、私の背筋を甘い痺れが襲っていた。
もう枯れたと思っていた自分の身体が、恐ろしい程反応している。
そのまま押し倒された私の背中は、あっという間にソファーへと沈み込んでいった。