ウソつきより愛をこめて
「だ…だ、め…っ」
覆いかぶさってきた橘マネージャーが、私の首筋に沿って啄むようなキスを繰り返す。
いつものように殴ってやめさせればいい。
ふざけんなって顔をひっぱたいて、大声で叱り飛ばしてしまえばそれで済むことなのに。
「…い、くな…」
低く掠れた声が私の心を震わせる。
「もう、どこにも行くな」
切なく歪んだ瞳には、私の困惑した表情が映っていた。
…本当に身体を求めてるだけの人がこんな顔をするのだろうか。
寝ぼけているのか酔っているのかすらよくわからない彼を、なぜか強く突き放すことが出来ない。
まるで壊れ物を扱うように慎重な手つきで橘マネージャーの腕が背中に回っていき、私の身体を優しく抱きすくめてくる。
「…あっ、」
お風呂上がりのいつもの癖で、ルームウェアの下には何も身につけていない。
薄い布ごしに触れ合う身体がもどかしいように、彼の手つきがだんだん性急なものへと変わっていた。
「あ、…だめだって…っ」
上着の裾から入り込んできた冷たい指先が、お腹からウエストラインにかけてをなぞる様に辿っていく。
「…やぁっ…」
そのまま服を上にたくしあげられて露わになった私の上半身は、橘マネージャーの焼けつくような視線の前に容赦なく晒されていた。