ただ守りたかった居場所
次の日、安部とたまたま一緒に帰った。



その時、


「会社に出会いないですか?」


「なかなか、ないんじゃない。」


「私、佐々木さんってなんか良いですよね。仲良くなりたいです。」


と、安部が言ってきた。



「頑張って仲良くなりな。」


と、私はそっけなく返事をした。




「佐々木さんの携帯電話のアドレスとか知りたいんです。」




「聞けば教えてくれるよ。」




「私から聞くんじゃなくて、聞いてほしいんですよ。」




「自分から言わなきゃ、多分佐々木さんの性格からして、聞いてはこないんじゃないかな。」


と、帰り道ずっと佐々木の話をして帰った。




まだ私は、



『佐々木さんが相手にしないだろうし、彼女も本気ではないだろう』


と思い、気持ちにゆとりがあった。




ついに彼女は佐々木の、携帯電話の番号とメールアドレスを手に入れた。




送別会の次の朝、偶然前を歩いている佐々木を見つけ、安部は走って佐々木に声をかけたことをきっかけにし、その日から毎日、安部は佐々木と会う時間の電車に乗り、一緒に出勤するようになった。



それをきっかけに、連絡先は安部から聞き出した。



佐々木の連絡先を知った日の朝の安部は、うれしくてしょうがなかったらしく、すぐに私に報告してきた。



「よかったね。」


と私は一言だけ返した。
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