ただ守りたかった居場所
 入社して二ヶ月たった頃、私は佐々木と話をしたくなってきていた。



 そんな時、運命の様な出来事が起きた。
 


 仕事が順調に進んでいた私のチームは、人手の足りない他のチームに1人異動させるという話をしていた。



 その1人が、私か、私と同じ日に入社した子のどちらかという話だった。



 どちらが異動するかは二人で話し合って決めてとリーダーに言われた。



 しかし、お互いに、異動してもしなくてもどちらでもよかったので、その日の午前中、リーダーに考えてもらって、午後結論を出すことにした。



 
 午後になっても、リーダーから異動の話が出る気配がなかった。



 でも、私はなるようになると思い、与えられた仕事をしていた。
 


 三時過ぎになり突然、佐々木が、私のいるチームのリーダーと、私がいる横でぼそぼそと相談を始めた。



 
 相談が終わったと思ったら、佐々木が、
 

  「相馬さん、異動です。明日から、うちのチームでよろしくお願いします。」


           と言ってきた。



 
 私は、まさか佐々木のチームに異動になることはないと思っていたので、すごく驚いたが、うれしい気持ちもあった。



 
 もちろん佐々木と話す機会やどんな人か知ることができるうれしさもあったが、今のチームのリーダーとどうも性格的に合わなくて、日に日に苛々が溜まっていたので、異動は二重にうれしい出来事だった。



 どうしてこのときの異動が私だったかは、後に知ったが、
 

  「ただなんとなく、相馬さんがよかったから。」


           と、佐々木に言われたときは、どんな理由だよと少しがっかりした。



 会社に入社して二ヶ月、心機一転、私の新しい生活が明日から始まる。
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