bitter・princess ー短編ー
First love
――ギシギシと軋むベッド…。

部屋に響くふたりの吐息。

「…速音…ちゃん」


男は、小さくあたしの名を呼び

熱いキスを送ってきた。


あたしは、それを無言、無表情で受け入れる。


世の中の恋人たちは、何のためにこんな行為を繰り返すんだろう。

『愛を確認する』…?

『愛し合うからこそ触れ合う』…?


馬鹿馬鹿しい。

あたしにとっちゃそんな言葉、クソ食らえだ。


セックスなんて行為

あたしからしちゃ、自分の存在を確かめるためのもの。


お父さんやお母さんは愛し合い、幸せそうに暮らしているけど

あたしには“愛”なんて言葉、意味がない。


「…速音ちゃん、今日感じなかった?」

男…大地はあたしの髪を撫でながら、耳元で囁いた。

欝陶しい声。

「そんなことないよ?」

あたしは、感情とは裏腹の、甘い声で答えた。


「…大地くん、もう帰らないとやばくない?今日彼女とデートでしょ?」

大地は、やばいって顔をして、頬を掻いた。
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