bitter・princess ー短編ー

春馬は、あたしのそばに座り、黙ってお菓子に手を伸ばした。


細く、白い腕…。

長い指。

大地とは違う。

少年の腕。

でも、やっぱり男らしい。


自然と、あたしの視線は、春馬の手から、顔に移動していた。


…切れ長の目。

捕らえられたら、きっと逃げられない。


あたしの中に、変な感情が生まれた。


何て言うか…

心臓を鷲掴みにされたような


胸が疼くような


もっと、簡単に言うなら…

そう。


「触れ…たい」



「速―っ……」

春馬の声を遮ったのは

あたしの唇だった。


あたしは、春馬を押し倒し

キスをしていた。


それは…、ただ重ねられただけの

幼稚なキスだった。



春馬は、抵抗しなかった。


唇を離すと、春馬は、そっとあたしの唇のラインを

その細くて長い指でなぞった。


「何で…キスなんかすんだよ…」


悔やんだような、遣る瀬ない感情を隠せない声だった。


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