bitter・princess ー短編ー
何度も、何度も。

優しくあたしの唇を撫でる春馬。


「春馬は…嫌だったの?」

あたしの問いに、春馬は首を振った。

「嫌だったわけじゃない。
ただ…」


春馬は、あたしの唇から視線を上に上げ

あたしと目を合わせて、言った。


「何で…もっと自分を大事にしないんだよ……!?
キスとか…そーゆうこと…、簡単に好きでもない男にヤラせんなよ!!」

「……―っ」


あたしの中で、今まで積み上げてきた

“何か”が、音を立てて崩れた気がした。


「春…馬に……、春馬に何がわかんのよ!!」

あたしは、立ち上がって怒鳴り散らした。


「あたしは―…、あたしは恋なんてしない!!」


ポツポツと降る雨が、窓を叩く音がした。

「速音…?」


「あたしは、男なんて好きにならない!!」


外で降る雨は、激しさを増してきた。


あたしは部屋を飛びだした。


「速音!!待てよ、速音!!」

制止する、春馬の声も無視して―…。




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