bitter・princess ー短編ー
そう言って、春馬はあたしの髪に触れた。

「っ―…」

ドクン―

と心臓が跳ね上がった。


そして、一気に呼吸が出来なくなった気がした。

春馬の吐息がかかる。


微かに香る、桃の匂い。

春馬の好きな、桃飴…。


息が、吸えない。

心臓が、握り潰されたみたい。


春馬の吐息の音で、自分の心臓の音が聞こえない。

あたし、どうしちゃったの?


春馬相手に、おかしいよ。


「お…お兄ちゃんに聞いたでしょ…。あたし、レイプされたんだよ」

「えっ」

春馬は、一歩後ず去って、たじろいだ。

「…それに…好きでもない男に体許すような…馬鹿で軽くて……汚れてる…
汚い女だよ。
春馬はまだ中学生なんだから…あたしなんかに関わらないほうがいいよ…」



「速……」

春馬が喋る前に、あたしは、走ってその場を去った。


そうだよ。

あたしなんかに関わっちゃダメ。


どうせ、春馬だって心の中じゃ軽蔑してる。


あの態度は、あたしに気を遣っただけなんだから。






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