bitter・princess ー短編ー

熱を帯びた唇が、首筋に触れても

荒い息が耳にかかっても


――何も感じない。



大地は、ゴツイ手をスカートの中に忍ばせた。



「――…っ」

激しい嫌悪感に襲われた。


そのとき――


バンッ―!!

という、爆発音のような音の後

ダンダン、と階段を上がる足音がした。


大地は、聞こえていないように、無視して愛撫を続けた。

けれど

再び、バンッと音がして、部屋のドアが開かれた。

「テメェ!速音から離れやがれ!!」

その言葉と同時に、床に叩きつけられた、大地の頭。

あたしは、そっと顔を上げた。


「――…春馬」

何で、ここにいるの?


どうしてわかったの?


そう聞いたつもりだったけど、あたしはただ唇をパクパクと動かしただけだった。



「…何すんだ!!くそガキ!」

むくっと起き上がり、春馬を睨み付ける大地。

「…帰るぞ、速音」


大地を無視して、春馬はあたしの手を取った。

「えっ!?」


「来いよ」

強い力で引っ張られ、あたしは渋々春馬に着いていった。


春馬は、家に着いても、一言も喋らなかった。
< 22 / 29 >

この作品をシェア

pagetop