bitter・princess ー短編ー
熱を帯びた唇が、首筋に触れても
荒い息が耳にかかっても
――何も感じない。
大地は、ゴツイ手をスカートの中に忍ばせた。
「――…っ」
激しい嫌悪感に襲われた。
そのとき――
バンッ―!!
という、爆発音のような音の後
ダンダン、と階段を上がる足音がした。
大地は、聞こえていないように、無視して愛撫を続けた。
けれど
再び、バンッと音がして、部屋のドアが開かれた。
「テメェ!速音から離れやがれ!!」
その言葉と同時に、床に叩きつけられた、大地の頭。
あたしは、そっと顔を上げた。
「――…春馬」
何で、ここにいるの?
どうしてわかったの?
そう聞いたつもりだったけど、あたしはただ唇をパクパクと動かしただけだった。
「…何すんだ!!くそガキ!」
むくっと起き上がり、春馬を睨み付ける大地。
「…帰るぞ、速音」
大地を無視して、春馬はあたしの手を取った。
「えっ!?」
「来いよ」
強い力で引っ張られ、あたしは渋々春馬に着いていった。
春馬は、家に着いても、一言も喋らなかった。