ある物語

不意に、上空から風を切る音がした。
「？」
上を見上げると、空から人が落ちてきた。
その者は、ふわりと着地したかと思うと、エリノアをジロジロと見た。
「……ふんふん！」
少年のような外見の黒い翼を持った人物は鼻をひくひくさせている。
「キミ、そこに隠している本を渡しなさい！」
きらきらした目で言ってきた。
「隠したつもりはないのだけれど。」
そう言うと、鞄から本を出した。
年季が入った厚い本だ。
「これは、ボクも読んだことない本だ！借して。」
少年はきゃっきゃと笑って受け取った。
傍らに抱いている人形がふわりと宙を舞う。
「館長。そろそろ、書類を提出する時間です。お戻りになられるべきでは？」
「なにさー……レミリアの意地悪。」
淡々と言う人形に少年が口を尖らせる。