ある物語

少しして、作業着から私服に着替え終わると外に出た。
外はクリスマス一色だ。
「メリークリスマス！」
そう言ってプレゼントを配るスタッフの中に見覚えがある顔があった。
「レナータ。」
「フィーネさん！」
エリノアとディーラは声を揃えて話しかけた。
「やぁ。」
レナータと呼ばれた女性はにこやかに手を振った。
サンタの格好をしてプレゼントを配る様子は見ていて微笑ましい。
小さな子供がきゃっきゃと声を立てて笑っている。
傍らで黒猫が欠伸をしている。
魔女の一族である彼女の使い魔である猫はつまらなさそうだ。
「大変だね。この寒いのに。」
「いいや、楽しいよ。」
エリノアにレナータは子供を見て言う。
「だって、子供は可愛いもの。」
うふふと笑う様子を見て、保母になればいいのにとエリノアは思った。
「学校は？」
「あぁ、冬休みだから大丈夫。」
ディーラにレナータが答えた。
彼女はレナータよりも五歳年下の大学生だ。
エリノアは大学へは進まなかったが、ディーラは法学部へ進んでいる。