羽柴の彼女
遠ざかっていく二人の背中。
そんなにくっつくな、萌に触るな、お前みたいな奴が気安く萌って呼ぶな。
思うだけで、当たり前のように届くことはなく、二人の姿は見えなくなった。
どうせ萌を待たせている間、別の彼女といちゃついてたんだろう。
考えただけでも頭の血管が切れてしまいそうだ。
そんな汚い手で、俺でさえも触れたことのない萌の手を、平然と握る。
女を、何だと思っている。
萌を、何だと思っている。
力なく、その場に崩れ落ちた。
今の俺は、先刻ゴミ箱を漁っていたビン底の眼鏡野郎と遜色ない。
哀れで、惨めで、カッコ悪い。
みんな大好きな「王子様」とは正反対。
まるで、醜いボロ雑巾のようだ。