羽柴の彼女





それは、写真だった。
ホテルの前だろうか。
顔を嫌悪感に歪ませる羽柴と、そんな羽柴にすがり付く女の姿がはっきりと写し出されている。
普段の余裕ある穏やかな羽柴の顔からは想像もできぬような、恐ろしい表情。
ただ事ではないというのは、それを見ただけでも充分に伝わった。

ただ、朝倉のいう通り、意味はさっぱり分からない。



「これは・・・?」


「その写真、ホテルから出てきた二人を撮ったものなんだけど、すごい険悪な雰囲気で、その時僕、たまたま羽柴が言ってた言葉、聞いちゃったんだ・・・」


「・・・なんだ?」


「もうお前は用済みだ!俺がヤってやったんだから感謝しろ!って」


「・・・・・・・・」


「びっくりしたよ僕!そんなこと言うやつ現実にいるんだなーってさ、まぁいたとして羽柴くらいなもんだと思うけど。それで思わずカメラ構えてたよ!」



とりあえず、朝倉は将来、パパラッチにでもなるべきだ。
ぺらぺらと熱く語り出した朝倉を見て俺は心底そう思った。

もう一度、写真に目を落とす。
やはりこいつ、ただ者ではない。
なんて最低なヤツなんだ。
ここまで来ると、逆に清々しいとさえ思えてくる。

また、萌が羽柴の性処理の道具として使い捨てられるのも時間の問題だと俺は悟った。
これは、一刻も早く、萌にやつの本性を伝える必要がありそうだ。
ヤリチン野郎の魔の手が、萌を汚し、傷付ける前に。

居ても立ってもいられない。
実行は、明日だ。






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