羽柴の彼女
友人は極端に少ないくせに、情報網だけやたらと広い朝倉が言うには、今日の放課後であれば萌と二人きりになれるチャンスがあるかもしれない、とのことだった。
そんな情報、一体どこをどう調べれば入手できるというのか。
知りたいような気もするが、なにぶん気味が悪い。これは、知らぬ方が懸命であろう。
その胡散臭さはいつものことだが、言わずもがな俺も友人は少ない。
この、薄気味悪い男の頼りない情報に頼るほか、ないのだ。
昨日の今日で確かに気まずいは気まずいが、あの性欲男に処女(おそらくそうであろう)を奪われ、ボロボロになって捨てられる幼馴染みの姿を黙ってみていられるほど、俺は悪趣味な人間ではない。
繰り返しのようにはなるが、何故あんなやつがモテているのか、俺は心底疑問に思う。
女というのは、女性経験の多い男に魅力を感じるものなのか?
というかそもそも、この世の中自体がそういった風潮にあることに、納得がいかない。
経験人数だの、付き合った数だの、初体験の年齢だの。
そういったことを自慢げにぺらぺらと話せてしまう人間を、そもそも俺は好かない。
そんなことを重要視して何になる?
「今までどんな人と付き合ってきた?」
「初エッチはどんなだった?」
そんな質問、クソ食らえだ。