羽柴の彼女





羽柴は学校一女子にモテる。
成績優秀。スポーツ万能。ルックス抜群。
モテる条件が全て揃っている、俺のような凡人にとっては奇跡のような存在である。

女子の間では王子という気色の悪いニックネームで呼ばれ、持て囃されていた。
本人が満更でもなさそうなのがまた鼻につく。
かと言って興味無さそうにされてもどのみち鼻にはついていただろうが。

羽柴のことが気に食わぬと思っている男連中は、どうやら俺の他にも数多くいるらしい。
現在はモテない男子生徒が中心となって、羽柴の本性を探ろうと日々目を光らせているほどだ。

ちなみに、朝倉もその中の一人である。

当初、何かスクープ写真が撮れるのではと始めた盗撮も、最近ではすっかり小遣い稼ぎの為のアルバイトと化していた。
そんな朝倉本人は、今まで女子に気持ち悪がられていたのが、このことをきっかけに女子と話せるようになったと喜んでいる。
それも全て羽柴がモテているお陰だというのだから、何とも哀れな話である。



「それより、あの写真ばらまくって話、どうなった?」

「ああ、あれはやめた方がいいよ」

「何で?」

「どうせあんな写真僕らがばらまいたところで、合成だって羽柴ファンから袋叩きにされるのが関の山だ。」

「あんなに違和感ない合成写真、俺達に作れるわけがないだろ。」

「でも、僕はもう今の現状に満足してるんだよ。それが、崩れるのが怖いんだ。だから、もしやるっていうなら、他のやつに言えばいいよ、くれぐれも僕のことは巻き込まないでくれ。」



さっきまで意気揚々としていた朝倉は何処へ行ってしまったのか。
周囲の評価を気にするなど、なんとも朝倉らしくない。
このまま、あわよくば羽柴ファンの女子とヤれるとでも思っているのだろう。
まったくもって汚らわしい。虫唾が走る。

ちなみに、あの写真、というのは、先日朝倉がカメラにおさめた、衝撃のスクープ写真のことである。
何枚かあるその写真には、それぞれ羽柴が別の女子と抱き合ったり手を繋いだり、キスをしたりする様子が写し出されていた。
それも、全てこの学校の生徒である。
器用なのか運が良いのか、今までバレずにいるようだが、調査の結果、つい最近まで八人の女子と同時に交際していたという事実が明らかとなった。

そしてついこの間、羽柴の彼女がもう一人増え、九人にまでなった。


そのもう一人というのが、俺の隣の家に住む、幼馴染みの屋島萌だったのである。





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