羽柴の彼女
何故朝倉のやつが萌のことを知っているのかは謎だが、確かにやつが言った通り俺は長年の間、萌に告白することができずにいた。
何度か試みようとしたことはあるのだが、あいつを前にすると口が思うように動かなくなり、つい傷付けるようなことを口走ってしまう。
それで、あれよあれよという間に、萌を手放すこととなってしまった。
全く、救いようのない阿呆である。
いつまでも変われずにいるのは、俺の方だったのだ。
「俺もう帰るわ、じゃあな」
朝倉は俺の言葉を無視して、我を失ったようにただの丸められた紙を探し続けている。
何で俺には、こんなやつしかいないんだ。
類は友を呼ぶ
という言葉を思い出して、寒気がした。
というか本当に寒い。
刈り上げられた頭のせいだろうか。
身震いをして、マフラーを巻く。
今日は特につまらない一日だった。
羽柴のことも、余計に考える羽目になるし。
さっさと帰ろう。そうしよう。
ずっと音が鳴りっぱなしになっていたゲーム機の電源を落とした。