Photograph
「あ、あの、こんなもので良かったら・・・。」
私がおずおずと先ほど飛び散らせてしまった写真を渡すと会長は一枚一枚丁寧に写真を見ていった。
会長・・・写真、嫌いじゃないのかな?
しばらく不思議に思いながら見ていると会長は私の顔を見てきた。
「俺は写真が嫌いなわけじゃない。」
急に喋りだした会長に私は黙って耳を傾ける。
「俺も、母と同じように写真を眺めるのが好きだ。
ただ、どうしても・・・人の写真を見るのは嫌いだった。」
「それは、どうしてですか?」
私が首を傾げると会長はただ真っ直ぐ私を見た。
「人は、カメラの前では必ず笑顔だからだ。」
会長の言った言葉が心に響いた。
「人は見られていると思えばどんなに悲しくてもカメラの前では笑顔でいなくてはならない。
それが、俺にはただ哀れだとしか思えないからだ。」
会長は写真の中に写っている人を哀れだと言った。