ring ring ring
 『もしもし』
 数回のコール音に続いて、声が聞こえた。
 「あ……海野ですけど」
 『わかってますよ、名前通知されるんで』
 軽い憎まれ口に、ほっとする。高林くんを選んで正解だった。
 『どうかしたんですか?あ、指輪の件がうまくいったとか?のろけ話なら勘弁ですけど』
 「えー……あはは、のろけなんかじゃないよー」
 そうだったらどんなにいいか。わたしは、鼻声なのを気付かれませんようにと祈りながら、わざと明るく笑い飛ばした。でもそんな思惑も相手には通じず、
 『泣いてるんすか』
 ストレートに言い当てられてしまう。
 「……泣いてないし」
 『今どこですか。そっち行きますよ』
 「いいよ、来なくて」
 『行きます。ほっとけないんで。場所教えてください』
 強がれば強がるほど、高林くんの声はどんどんやさしさを帯びて、そのせいでわたしの涙腺はさらに緩んでいくのだった。
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