ring ring ring
 高林くんは、しばらく絶句していた。その驚きようはわたしの想像以上で、びっくりしたというよりは衝撃を受けたというほうが合っているかもしれない。
 「あの……驚かせてごめんね」
 放心状態に近い高林くんは、わたしの声で我に返り、
 「あ、いや、驚いたっていうか……」
 きょろきょろと目を泳がせた。そして、
 「おれのせいですよね」
 手を口に当てて、小さく言った。
 「えっ、た、ちょ……高林くんのせいじゃないよ!どうしてそうなるの」
 「だっておれが指輪を取り上げたのがそもそもの始まりだったし」
 「それは……でもそれはわたしが高林くんに愚痴ったから、それを助けてくれようとしただけだし、それに、そうでなくてもいずれこうなってたと思うの。だから……」
 わたしの視線の先で、高林くんの顔が赤くなるのがわかった。そしてその瞳が、みるみる潤んでいくのも。
 「やだやだ、ねえ、どうしたの。ちょっと、泣かないで」
 「泣いてないす」
 さっきまでと、まるで立場が逆になってしまった。まさか高林くんが、わたしと忠信さんの破局を知って泣くなんて。
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