ring ring ring
 本当にはるかちゃんが忠信さんとそうなりたいのなら、紹介してあげないこともない。どう転んでもわたしとよりを戻すことはないのだし、マザコン歓迎な女性なんて貴重なのだから。
 「でも、高林くんはいいの?」
 「おれ?何がですか」
 「はるかちゃん、岡田さんに取られちゃっても……」
 わたしが遠慮がちに言うと、高林くんは盛大にため息をついた。
 「前にも言いましたけど、おれと本村は本当にそんなんじゃないんで」
 「そうなの?でもあんなに仲いいのに」
 「人間としては好きですけど、異性ではないです」
 そこまで力を込めて言われてしまうと、ますますあやしくなるものだ。「ほんとに〜?」とからかい半分に訝しむと、高林くんはちょっと怒った目をして、残りのごはんをかきこんだ。
 「海野さんって、マジで鈍感なんすねっ」
 「えー、でも周りのみんなは、ふたりのことそう思ってるよ」
 「……もういいっす。さ、行きましょう」
 高林くんはそう言うなり、伝票をさっと掴んでレジへと向かってしまった。
 「あ、ちょっと!わたしまだ食べてるのにー!」
 たしかにわたしは色恋沙汰には疎いほうだけれど、そんなに怒らなくてもいいと思うのだった。
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