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薬指の告白
 昼休み、由紀が週末の夫婦旅行のお土産をくれた。
 「美波には、ハス茶だよ〜」
 まさかのベトナム土産だった。
 「ベトナム行ったの?国内だとばっかり思ってた」
 「わたしもそのつもりだったんだけどね、旦那が、3日くらいあれば海外でも行けるぞって言うから勢いで。あ、はるかちゃんにはコレ」
 「ありがとうございます、カシューナッツ大好き〜!」
 はるかちゃんは、言いながら箱を開けて、個包装されているカシューナッツクッキーを分けてくれた。由紀が、「わたしも自宅用に買ってあるから」と辞退したので、わたしは2枚ももらえてラッキーだった。でも、
 「じゃあお返しにハス茶淹れてくるから、みんなで飲もうか」
 というわたしの提案は、
 「きゃー、わたしハス茶の匂いがダメなんで、会社で淹れないでください」
 というはるかちゃんの拒絶によって、却下された。
 「やっぱりね。はるかちゃんはハス茶キライだと思ったんだー」
 それを見越しての、由紀のチョイスはさすがだ。わたしは好き嫌いがなさすぎて、他人にも同じ感覚で買ってしまう癖があるから、こういう由紀の気遣いは参考になる。
 「クセのある香りって、苦手なんです。パクチーとかもダメ!」
 そういうところ、忠信さんに似ている。
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