ring ring ring
 会議室へ入るなり、はるかちゃんは黙り込んでしまった。さっきまでキャッキャ騒いでいた人と同じとは思えないしおらしさだ。事情を知っているわたしも、何だか声をかけにくくて、室内には妙な空気が渦巻いてしまった。
 「ふたりとも本当にどうしたの?わたしだけ何も知らなくて、除け者なんてヤダよ」
 イスに座り、ぴくりとも動かなくなったはるかちゃんの様子を見た由紀が心配そうに言う。除け者にしないでという由紀の気持ちはよくわかるけれど、わたしから話していいものなのかわからなかった。でもこの様子では、当分だんまりを決め込むかもしれない。どう話そうか考えているのかもしれないけれど、限られた昼休憩ということもあって、わたしが、
 「はるかちゃん、わたしが言おうか」
 と言ったそのとき、意を決したのか、
 「あっ……いえ、わたしが!」
 ようやくはるかちゃんが口を開いた。
 「あの……わたし……おふたりに報告しなくちゃいけないことがあって……。美波さんは多少の事情は知ってると思うんですけど」
 報告、ということは何か進展があったのだ。高林くんったら、どうして何も教えてくれなかったの、とドキドキしている隣で、由紀は深刻な顔をしていた。
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