ring ring ring
 外の物音を完全にシャットアウトした会議室で、わたしと由紀は息をのんではるかちゃんの言葉を待った。
 「彼氏っていうんじゃないんですけど……」
 いつもよりワントーン高い声のはるかちゃんの顔が、みるみる赤く染まる。彼女の緊張がわたしにも伝染してくるようだった。
 「わたし……わたし……」
 そしてはるかちゃんは、勇気を振り絞るかのごとく両手をぎゅっと握りしめ、勢いよく言い放った。
 「す……すすす……好きな人が、いいいいいます!」
 「ちょっと落ち着きなさいよ」
 テンパるはるかちゃんに、由紀の高速突っ込みが突き刺さる。
 張り詰めていた空気が、一気に緩んだ。
 「大丈夫?はるかちゃん」
 「だだだだ大丈夫です」
 という顔は、もはや茹でダコ同然だった。
 「とうとうはるかちゃんにも好きな人が……」
 「きゃー!言っちゃった、どうしようどうしようどうしよう」
 由紀は感慨にふけり、はるかちゃんは顔を両手で覆って足をバタつかせた。
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