ring ring ring
 「美波も知ってたの?相手のことも?」
 きっと今の由紀の頭の中は、疑問符だらけなのだろう。ただ好きな人がいると暴露しただけで照れまくるはるかちゃんに訊くのを諦め、わたしを質問攻めにした。
 「そんなおもしろいネタ、どうしてわたしにも教えてくれなかったの?いつから知ってたの?誰なの?」
 「え〜いつから、だろう……?数日前だよ。でもはるかちゃんから聞いたわけじゃなかったから、ちゃんと話してくれるまで待とうかなって思って……て……」
 言いながら、しまったと思った。由紀の目がキラキラ輝き出したからだ。
 「はるかちゃんじゃないなら、誰に聞いたの〜?」
 「な、何よ、その顔!」
 ここで高林くんの名前を出そうものなら、今度はわたしが由紀の興味の標的になってしまう。あらぬ誤解を与えることで、わたしはともかく、高林くんに迷惑をかけるわけにはいかないのだ。
 「誰だっていいでしょ。ていうか、わたしも、好きな人って言えるほど進展してるなんて知らなかったよ」
 わたしが言うと、はるかちゃんは耳まで真っ赤になって上目使いでわたしを見た。
 「美波さん、怒ってませんか」
 「怒ってないよ、大丈夫」
 不安そうなはるかちゃんに、わたしはやさしく微笑んだ。
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