ring ring ring
 「相手にしてくれないってことは、もう告白までしたの?」
 そうだとしたら、ずいぶんな急展開だ。まったくの無関係というわけでもないわたしに、誰も何も言ってくれないのはちょっとさみしいと思った。するとはるかちゃんは、「実は、ここだけの話なんですけど」と前置きして、続けた。
 「この間勇気を振り絞ってお食事にお誘いしたんです。そのときにいろいろお話をして、それがすっごく楽しくて……。だから酔った勢いもあって、付き合ってくださいって言っちゃったんです〜」
 また両手で顔を覆って照れている。かわいいくせに、やることは大胆だ。
 「食事って、自分で誘ったの?」
 「はい。高林くんには、おれに頼らないでくれって言われちゃったので」
 頼らないでくれ、か。たしかに美術館へ行った日も困っている様子だった。でも、わたしが悩んでいるときにはいつも走って来てくれるのに、同期のはるかちゃんを突き放すなんて、意外だ。
 それにしても、忠信さんはわたしとはるかちゃんが仲がいいことは知っているはずなのに、彼女の誘いに乗るということは、案外まんざらでもないのかもしれない。そうでなければ、元婚約者と仲がいい人となんて関わりたいはずがないのだから。
 「付き合ってくださいって言ったのに相手にしてもらえないってことは、断られたの?」
 「それが、ちゃんとした返事をもらえなくて」
 やっぱり。もしかして、脈ありなのかも。
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