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 「もしうまくいって結婚できたら、わたし、岡田さんのご両親と同居したいって思ってるんです。だってそうしたら、お母さんがきっと家事全般をやってくれるじゃないですか。それに岡田さんは今でもじゅうぶん稼ぎがあるから、わたし働かなくてもいいですよね。休日は岡田さんとお母さんの仲を邪魔しないようにって口実で、お友達と遊んだりできるかもしれないし。もっと先の話をすれば、いつか子供が生まれてもきっとお母さんが積極的に面倒みてくれると思うんです。つまりわたしは、役立たずだけど愛想のいい嫁としてニコニコしていればいいってことで、そんな生活、最高じゃないですか」
 はるかちゃんは、自らの妄想プランを熱く語って聞かせてくれた。それは、完璧ではなかったけれど決して実現できないレベルの話ではない。忠信さんがマザコンであることを逆手にとってそこまで考えられるとは、とうていわたしにはできない技であって、わたしは瞳を輝かせるはるかちゃんをすごいと思うと同時に、サポートしたい気持ちにかられた。
 「わたしで役に立つことがあったら言って」
 気付いたらそう口走っていた。由紀はまだ戸惑っているようで、
 「どうして美波がそんなにすぐ受け入れられるのかわかんない」
 とため息まじりに言っていたけれど、はるかちゃんの考えを否定はしなかった。
 「ありがとうございます。またいろいろ相談させてください」
 はるかちゃんはにっこりほほ笑んで、付け加えた。
 「美波さんも、高林くんとうまくいくといいですね」
 「……!」
 何てことを!と心で叫び、恐る恐る隣に目をやると、案の定、由紀が目をまん丸にしてわたしを見ていた。
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