ring ring ring
 はるかちゃんが、指輪に視線を釘づけにしたまま言う。
 「あんなステキなお店でプロポーズなんて羨ましい!プロポーズの言葉、どんなでしたか」
 「内緒」
 「あの岡田さんだもの、捻りのきいたプロポーズなんて出来ないわよ。結婚してください、に決まってるじゃない」
 誰にも話していないのに、由紀にずばりと言い当てられた。まあでも、忠信さんの真面目ぶりは社内でも有名で、ちょっと彼と仕事をしたことがある人ならば、誰でも想像できるだろう。
 「えー、もっとないんですか。ぼくが一生、このイルミネーションよりもきみを輝かせてみせる、とか」
 「歳を取っても、ずっとおれの隣で笑っていてほしい、とか」
 なんて騒いでいるのは、まだ彼のことをよく知らない若い女の子ばかりで、
 「ないない」
 わたしと由紀は、声を揃えた。
< 13 / 161 >

この作品をシェア

pagetop