ring ring ring
 「急に誘っちゃったけど大丈夫だった?」
 「はい。今日は同期の子とも約束してなかったので、どうしよっかなーって思ってたところだったので、むしろうれしいです」
 「それならよかった」
 昼間の外出なら、もう上着はいらない季節になった。日差しと風がちょうどいい具合に混ざり合って、このまま公園でお弁当でも広げたい気分だと思いつつ、そうはいかないわたしたちは、最近オープンしたばかりの、カフェスペースが併設されているベーカリーへ入った。
 わたしたちはそれぞれに食べたいパンとスープのセットを注文し終えると、
 「3名さまですね、あちらの空いている席へどうぞ」
 と示された、3つのイスに囲まれた丸テーブル席についた。顔を寄せ合って内緒話をするにはちょうどいい。限られた昼休憩の時間を気にして、食べ始めると同時に、さっそく本題に入る。
 「元気ないけど、ただの……岡田さんと何かあった?」
 わたしの問いかけに、はるかちゃんはため息をひとつついてから答えた。
 「まあ、何かあったっていうか、何もないっていうか……何度誘っても、また今度ねとか機会があったらとか、適当にあしらわれちゃうんです」
 「何度誘っても、か。はるかちゃんの度胸ってハンパないね」
 「由紀、やめなよ。本気で凹んでるじゃない」
 「大丈夫です。あと美波さん、『忠信さん』でいいですよ、ずっとそう呼んでたんですよね」
 大丈夫と言いながらも、はるかちゃんは終始うつむき気味で、しゃべり方もどこか単調な気がした。
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