ring ring ring
 「付き合ってると思います?」
 「え……っと、そう、なのかな」
 高林くんも気にしていたのなら、付き合ってくださいって言ってくれればいいのに。いや、それともここは年上のわたしのリードを期待しているとか?それはちょっと面倒だけれど、でもやっぱり……。
 どぎまぎして答えに困るわたしに、高林くんが続けた。
 「本村ってのほほんとしてるけど積極的な部分もあるし、岡田さん、案外ぐいぐい迫られて観念してたりして」
 「え?あ、そっちか」
 「そっち?」
 「何でもない。そうね、そういうパターンもあるかもね」
 「……」
 「な、何?」
 高林くんが、目をキラキラさせてニヤつきながらわたしを見ている。
 「誰と誰のことだと思ったんですか〜」
 まずい。高林くんがこの目をするときは、決まってわたしに不利な流れになるのだ。
 「何でもないってば」
 早く誰か来て!と思ったとき、通路の奥に由紀の姿が見えた。
 「あ、由紀〜!こっちこっち!」
 わたしは、食い下がろうとする高林くんを押しのけ、古田夫妻に大げさに手を振った。
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