ring ring ring
 忠信さんが言った「次」とは、同じ施設内にある温泉のことで、わたしたちは脱衣所前で男女にわかれた。土曜日だから混んでいるかと思ったけれど、時間が中途半端だったおかげか、それほどでもない。広い露天には、誰も入っていない檜風呂があり、わたしたちはそこで疲れた体を温めることにした。
 「っていっても、はるかちゃんは運動してないから疲れてないか」
 「疲れてますよ〜!すっごい人ごみだったし、トリックアートと写真撮るときにポーズ決めるの大変なんですから」
 「写真撮ったの?見たい!」
 「あとで見せてあげます〜。岡田さんとの2ショットもありますよ!」
 「え、嘘。わたしとはほとんど写真なんて撮ったことないのに」
 「うふふ〜」
 意外だった。もし忠信さんとはるかちゃんがくっつけば、きっと忠信さんが引っ張っていくのだろうとばかり思っていたのに、話を聞いていると、一見そう思えても実ははるかちゃんが忠信さんをうまく転がしているようだ。合わない部分を意識的に避けながら交際してきたわたしとよりも、はるかちゃんとのほうがお似合いだ。
 「そのままうまくいくといいね」
 「でもやっぱり、岡田さんのお母様は強敵です!」
 「もう会ったの?!」
 さっきからはるかちゃんには驚かされてばかりだ。
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