ring ring ring
 「家に入った瞬間から、お手洗いとお風呂以外はずっとべったりですよ。それはもう自然に、どちらからともなくという感じでした」
 言われてみれば、そうだったかも。ていうか、わたしがお邪魔したときは、お風呂でお母さんが忠信さんの背中を流していたかも。
 「それで気付かないって……美波、あんた重症だわ。鈍感にも限度ってものがある」
 「うーん……親離れも子離れもできてないなとは思ったけど、でも久しぶりに会った親子ってこんなもんなのかなとも思ったり……」
 苦しい言い訳を並べ立てれば立てるほど、ふたりはますます呆れ顔になった。
 「美波さんはそんなんだから、高林くんともなかなか進展しないんですね」
 「そうなんだよねー。鈍感というか、もはや無感?」
 「おお、由紀さん、うまいこと言いますね!」
 「なぜそこで高林くん?!」
 急に方向を変えた話題を突っ込むと、
 「なぜって」
 ふたりは声を合わせてわたしを見た。
 「そろそろ認めてあげなさいよ。はたから見てて、心が痛む」
 「そうですよ。高林くんってアレでもけっこうモテるんですよ。このまま放置しておくと、誰かに取られちゃいますよー」
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