ring ring ring
 休日のコインパーキングはどこもいっぱいで、空車を探すのにずいぶん時間を取られてしまった。もっと早く待ち合わせて来るべきだったと悔やんでも後の祭り。
 「ちょっと遠くても歩けばいいし、あっちのほうの駐車場も探してみませんか」
 「そうだね。ごめんねー、わたしの下調べが甘かったせいで」
 「いえいえ!おれも、もっとスムーズに案内できる予定だったのに……」
 高林くんがうなだれた。あれほど自信ありげに「調べてきましたから!」なんて言っていたけれど、結局たいして役に立たなくて、途中からわたしがずっと案内看板だけを頼りに運転していたら拗ねてしまった。そのうえ、
 「ていうか、そもそもお台場に来たかったなら車じゃなくてもよかったよね」
 由紀がここにいたら、「あんた今それは禁句でしょ!」と突っ込まれそうなことを言ってしまって、しまったと助手席を見たら、案の定、またさらにうなだれている。
 「車だったら、美波さんとふたりだけの空間になるからいいなと思って……」
 最後のほうはだんだん声が小さくなって聞き取れなかったけれど、どうやらまたまたかわいらしいことを言っている。
 「高林くんって、ときどき子供みたいなこと言うからかわいいよねー」
 と、わたしはパーキングを探しながら、何気なく発した。でもそれは、本当に無意識に言っただけで、もちろん悪気なんて全然なかったのに、高林くんの気に障ったようだった。
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