ring ring ring
 ランチタイム、わたしと由紀は、小会議室で弁当を広げた。社員食堂なんて便利なものはないし、外食もお金がかかる。面倒だけど弁当がいちばん堅実だった。
 「最高のクリスマスプレゼントね」
 由紀は、わたしと忠信さんとの婚約を誰よりも喜んでくれた。社内恋愛だから周囲に気を使うこともあったけれど、同じく社内恋愛で結婚した由紀がいつも助けてくれたから、ここまで続いたのだと感謝している。
 「結婚って、実感湧かないけどね」
 「これから式やら入籍やらの準備で忙しくなるわよー」
 「ご指導よろしくお願いします、先輩」
 「まかせなさい」
 頼もしい由紀の言葉に安心し、箸を取る。わたしは、いつだったか夕食にハンバーグを作ったときに、弁当用にと作って冷凍しておいた小さなハンバーグを頬張った。結婚したら、きっと忠信さんの弁当も作るのだろう。彼は、おいしいと食べてくれるだろうか。そもそも、弁当だけでなく、わたしの手料理に忠信さんは満足してくれるだろうか。
 「わたしと忠信さん、食べ物の好みが合わないのよね……」
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