ring ring ring
 由紀の場合は、ご主人も協力的で、結婚前は休みの日になるといつも一緒に計画を立てていた。それでも多忙を極めたというのだから、わたしたちがこんな調子で、気が気でないのかもしれない。
 「今からこんなこと言うのもアレだけどさ、結婚って、そんな簡単なものじゃないよ」
 「わかってる。ごめん、心配かけて」
 「わたしなんて、入籍と引越しだけでも大変だーって思ったし。美波、岡田さんのこと、やさしいけど気が利くタイプじゃないって言ってたじゃない。美波からちゃんと話して、協力してもらわないとね」
 「はーい」
 たしかに由紀の言うとおりで、忠信さんはやさしいから、どんなに忙しくても、わたしがちゃんと相談すれば、きっと時間を作って協力してくれるだろう。だからこそ言い出しにくかったけれど、いつまでもそのままでは永遠に結婚式なんてできない。頃合いを見計らって、切り出してみなくては。
 「だけどさ、数年前まで毎年ふたりで、今年もシングルベルだねなんて寒いこと言ってたのに、ちゃんとなるようになるものだね」
 由紀がしみじみ言った。
 「ほんと。わたしなんて、忠信さんと付き合い始めてからも結婚なんて遠いものだって感じてたのに、人生ってわかんないわ……あ、ちょっとごめん、電話だ」
 スマホが震えて、着信を告げた。
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