ring ring ring
 ほんの少し外に出ただけなのに、指先がかじかむほど冷えてしまった。コーヒーカップを両手で包み込むと、熱がじんわりと凍った指先を溶かしてくれた。
 「ねえ、古田さんと、何かあった?」
 もう一度訊ねると、由紀はコーヒーをひと口含んでから、言った。
 「結婚前の美波には言いにくいよ」
 「由紀……」
 そんなこと、言ってほしくなかった。夫婦の問題とはいえ、わたしと由紀の仲なのに。
 「たしかに、夫婦のことってわたしにはまだピンとこないかもしれないけど、親友として心配になるのは当たり前じゃない」
 「そうじゃないよ」
 由紀は目に涙を溜めて、わたしを見た。
 「さっきの岡田さんの言葉、聞いたでしょ。美波は、何とも思わなかった?」
 「言葉?」
 何か由紀の気に触るようなことを言っていたか思い出そうとするけれど、その場のノリで聞いていたせいで、細かいところまで思い出せなかった。
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