ring ring ring
 「ごめん、何て言ってたっけ」
 「休みの日に奥さんが旦那を放って出かけるのを許してくれるなんてたいしたもんだ、認めてやれって」
 「ああ……」
 言っていたかもしれない。
 「でも、わたしだってフルで働いてるんだよ。それなのにわたしが好き放題に遊び歩いて、旦那をほったらかしにしてるみたいな言い方で……悔しかった」
 「由紀、忠信さんはそんなつもりで言ったんじゃ」
 「そんなつもりだよ。うちの旦那もそうだし、わたしたち世代の男の人ってみんなそう。奥さんにも対等に働かせておいて、でも結局、家事は女の仕事だって思ってる。ひと昔前の感覚が残ってるんだよね。それで、休みの日にたまに何か作るだけで、おれ家事に協力的でいい夫だろって顔されてさ、そのたびに褒めたり感動しないとヘソ曲げて」
 由紀は、溜まっていた鬱憤をすべて吐き出すかの勢いで話し始めた。
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