ring ring ring
 「海野さん、酔ってますね」
 「うん〜、今日は回るのが早いみたい」
 「めっちゃ楽しそうな顔してますよ。さっきまで泣きそうだったくせに」
 「だって後輩の恋愛事情とか聞いたことないし、なんかわくわくするもん」
 にやけながらカクテルを飲むと、高林くんがそんなわたしを呆れ顔で見た。
 「ねえ、誰なの〜?」
 高林くんは、迫る酔っ払いをはいはいと宥め、少し視線をさまよわせてから、
 「……女の人です」
 ぶっきらぼうに言った。
 「そんなのわかってるよー、ゲイだとか思ってないし!」
 うまくはぐらかされてしまった。でも、わたしの中に残るわずかな理性が、これ以上無理やり聞き出してはいけないと言い聞かせる。
 わたしは大げさに笑って、また高林くんの肩を思いっきり叩いた。高林くんは、いってーと言いながらも、やっぱり笑っていた。
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