ring ring ring
 「不満げな顔ですね」
 わたしの内心を見透かした目で、高林くんが言う。
 「だって、それじゃどこから見たっていい人そのものなんだもの」
 「海野さんは、岡田さんの悪い評判を聞きたいんですか」
 「そうじゃないけど……でもあの人、わたしの前では女性を卑下したような物言いをすることもあるし、好き嫌い多いくせにグルメぶるし、他にも子どもみたいなところがたくさんあって、それなのにどうしてみんな、そんな人のことをそこまで慕うのかなって」
 唇を尖らせて婚約者の悪口を言うなんて、最低。しかも相手は彼の直属の部下なのに、わたしは自分を止めることができなかった。
 「たしかにやさしいところもあるけど、でも近頃、ときどき垣間見える冷たさが彼の本性なんじゃないかって思ったりするの」
 忠信さんの発言には、ところどころ、男性優位主義な匂いが漂う。はっきり断言できないけれど、わたしの勘が正しければ、結婚したらきっと亭主関白になるタイプだ。
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