ring ring ring
3月、祝日つながりの3連休初日、わたしと由紀は、はるかちゃんに誘われて、スーパー銭湯に来ていた。深夜営業しているのをいいことに、夕食から始まり、岩盤浴、天然温泉まで施設内を満喫するつもりで、現在は熱い岩盤浴で火照った体を休憩エリアで冷ましているところだ。
「ねえ美波、岡田さんと何かあった?」
施設は連休初日とあって混み合っており、休憩エリアでは数えきれないほどの座椅子が並ぶ中、3人分のスペースを確保するのが大変なほどだった。やっと座るなり、由紀が額の汗を拭いながら訊いた。
「……指輪のこと?」
由紀は無言で頷いた。
「わたしも気になってました。いつの間にか指から消えてましたよね」
わたしの左手をじっと見ているということは、高林くんは仲がいいはるかちゃんにも話していないようだ。もちろんこんなこと話されては困るけれど。
「デリケートな問題だから、美波から話してくれるまで待とうって思ってたけど、何も言ってくれないから」
由紀がさみしげに言う。
仕事中も、ときどき由紀の視線を感じていた。ああ、薬指を見ているんだろうなと思っていたけれど、いくら由紀でも、高林くんとのことを話すわけにはいかなくて、だけど別の言い訳を用意するのも気が引けて、そうこうしているうちに言い出せなくなってしまった。逆の立場なら、由紀の指から結婚指輪が消えたのに、そのことについて相談も報告もないなんて、そんなに悲しいことはないだろう。
「ねえ美波、岡田さんと何かあった?」
施設は連休初日とあって混み合っており、休憩エリアでは数えきれないほどの座椅子が並ぶ中、3人分のスペースを確保するのが大変なほどだった。やっと座るなり、由紀が額の汗を拭いながら訊いた。
「……指輪のこと?」
由紀は無言で頷いた。
「わたしも気になってました。いつの間にか指から消えてましたよね」
わたしの左手をじっと見ているということは、高林くんは仲がいいはるかちゃんにも話していないようだ。もちろんこんなこと話されては困るけれど。
「デリケートな問題だから、美波から話してくれるまで待とうって思ってたけど、何も言ってくれないから」
由紀がさみしげに言う。
仕事中も、ときどき由紀の視線を感じていた。ああ、薬指を見ているんだろうなと思っていたけれど、いくら由紀でも、高林くんとのことを話すわけにはいかなくて、だけど別の言い訳を用意するのも気が引けて、そうこうしているうちに言い出せなくなってしまった。逆の立場なら、由紀の指から結婚指輪が消えたのに、そのことについて相談も報告もないなんて、そんなに悲しいことはないだろう。