ring ring ring
帰り際、わたしは大事なことを思い出して、慌ててポケットに手を入れた。
「古田さん、これ」
由紀の結婚指輪を、古田さんに手渡した。これだけは、どうしても古田さんの手で由紀の指に返して欲しい。古田さんは、恥ずかしさのあまり渋っていたけれど、「はめてやれよ」という忠信さんの言葉に、照れながらも由紀の左手を取った。
指輪が無事に持ち主も元へ戻ると、休憩所にいた人々の間で、自然に拍手が起こった。数人だったのでささやかな拍手だったけれど、わたしはそれがうれしくて、一緒になって手を叩いた。由紀は照れくさそうに笑い、古田さんは、「酔っててよかったよ。素面じゃ無理だ〜」と頭を掻いていた。
「由紀には災難だったけど、ふたりが仲直りできて、よかったね」
わたしの隣で手を叩く忠信さんも、満足げだった。
「さっきまで飲み屋で、さんざん泣き言聞かされてたんだ。由紀に捨てられるーって」
「そうだったんだ。古田さんも気にしてたんだね」
「ほんのちょっとの気持ちの擦れ違いが、由紀ちゃんのストレスになってたんだな」
そのとき、忠信さんの視線が、ふたりに拍手を送るわたしの左手にあることに、わたしは気付いていなかった。
「古田さん、これ」
由紀の結婚指輪を、古田さんに手渡した。これだけは、どうしても古田さんの手で由紀の指に返して欲しい。古田さんは、恥ずかしさのあまり渋っていたけれど、「はめてやれよ」という忠信さんの言葉に、照れながらも由紀の左手を取った。
指輪が無事に持ち主も元へ戻ると、休憩所にいた人々の間で、自然に拍手が起こった。数人だったのでささやかな拍手だったけれど、わたしはそれがうれしくて、一緒になって手を叩いた。由紀は照れくさそうに笑い、古田さんは、「酔っててよかったよ。素面じゃ無理だ〜」と頭を掻いていた。
「由紀には災難だったけど、ふたりが仲直りできて、よかったね」
わたしの隣で手を叩く忠信さんも、満足げだった。
「さっきまで飲み屋で、さんざん泣き言聞かされてたんだ。由紀に捨てられるーって」
「そうだったんだ。古田さんも気にしてたんだね」
「ほんのちょっとの気持ちの擦れ違いが、由紀ちゃんのストレスになってたんだな」
そのとき、忠信さんの視線が、ふたりに拍手を送るわたしの左手にあることに、わたしは気付いていなかった。