ring ring ring
まずいことになった。
『明日は、指輪してきてくれよな』
去り際のこのセリフを聞いておきながら、明日になってもまだ指輪がなければ、わたしたちはおしまいだ。
どうしたらいいか、答えは簡単。高林くんに連絡して、指輪を返してもらえばいいのだ。
わたしはすぐさまスマホを手に取り、高林くんに電話をかけた。
「……出て……っ!」
コール音は続くが、なかなか応答がない。しつこく鳴らしたら、留守電になってしまった。仕方ないので、メッセージを聞いたら急いで折り返してほしいと伝言を残し、切った。
「もう〜、何でこんな大変なときに出てくれないのっ」
忠信さんが帰ってしまい、ひとり取り残されたわたしは、わいわい賑やかな居酒屋で、到底1人前とは思えない量の皿を次々と平らげていった。しかもときどき独り言まで呟いているわたしの席の横を通る客が、ぎょっとした顔でわたしとテーブルの上の料理を見比べているけれど、今のわたしはそれを気にしている場合ではない。
ちゃんと今日中に連絡が来るか、焦れば焦るほど箸は進み、満腹中枢が壊れたのではと心配になった頃にふたたび発信してみたが、結果は同じだった。
帰り道、高林くんと同期のはるかちゃんなら彼の家を知っているかもしれないと思い、何度も電話をかけようとした。でも電話すら繋がらないのに家まで押しかけるなんて図々しいこと、わたしにはできない。
深夜になっても高林くんからの着信はなく、わたしは寝る直前に最後にもう一度だけと発信し、留守電に、明日会社に指輪を持ってきてほしいとメッセージを残した。
『明日は、指輪してきてくれよな』
去り際のこのセリフを聞いておきながら、明日になってもまだ指輪がなければ、わたしたちはおしまいだ。
どうしたらいいか、答えは簡単。高林くんに連絡して、指輪を返してもらえばいいのだ。
わたしはすぐさまスマホを手に取り、高林くんに電話をかけた。
「……出て……っ!」
コール音は続くが、なかなか応答がない。しつこく鳴らしたら、留守電になってしまった。仕方ないので、メッセージを聞いたら急いで折り返してほしいと伝言を残し、切った。
「もう〜、何でこんな大変なときに出てくれないのっ」
忠信さんが帰ってしまい、ひとり取り残されたわたしは、わいわい賑やかな居酒屋で、到底1人前とは思えない量の皿を次々と平らげていった。しかもときどき独り言まで呟いているわたしの席の横を通る客が、ぎょっとした顔でわたしとテーブルの上の料理を見比べているけれど、今のわたしはそれを気にしている場合ではない。
ちゃんと今日中に連絡が来るか、焦れば焦るほど箸は進み、満腹中枢が壊れたのではと心配になった頃にふたたび発信してみたが、結果は同じだった。
帰り道、高林くんと同期のはるかちゃんなら彼の家を知っているかもしれないと思い、何度も電話をかけようとした。でも電話すら繋がらないのに家まで押しかけるなんて図々しいこと、わたしにはできない。
深夜になっても高林くんからの着信はなく、わたしは寝る直前に最後にもう一度だけと発信し、留守電に、明日会社に指輪を持ってきてほしいとメッセージを残した。