ring ring ring
お気に入りの店を褒めてもらえるのはうれしい。ここは隣の席との距離が絶妙で、他の客の話し声が気にならないところもいい。だから今夜も、きっと高林くんは指輪の話をするために電話をくれたのだと思って、それならばとこの店に決めたのだ。
ほどよく会話が途切れたとき、わたしは忘れないうちにと思い、切り出した。
「留守電に入れた指輪のことなんだけど」
「電話、間一髪間に合いましたね。電車乗ってたら誘えなかったもんな」
わたしが言いかけると、高林くんが被せて言った。
「え、ああ、そうね」
電車というより、あと数秒遅かったらわたしは改札の向こうだったから、誘われても断ったと思う。
「それにしても、朝、あれから席についてすぐ留守電聞いて、マジびびりましたよ。あんな切羽詰まった海野さんの声、聞いたことなかったし。あらためて、ほんとすいません」
いつもの元気いっぱいな高林くんとは思えないほどしおらしく頭を下げる彼を見て、
「わたしこそ、冷たくしてごめんなさい」
わたしも慌てて謝った。そのとき、
「あの、えっと、お待たせしました……」
頭上からの声に顔を上げると、アルバイトらしき若い女の子がハンバーグの皿を両手に持って、立っていた。向かい合って頭を下げるわたしたちに困惑した様子で、どぎまぎした女の子がおかしくて、わたしは思わず吹き出してしまった。一方の高林くんは、「あっ、すいません!」と立ち上がり、女の子の手から皿を受け取ってペコペコしていて、それもまたおかしかった
ほどよく会話が途切れたとき、わたしは忘れないうちにと思い、切り出した。
「留守電に入れた指輪のことなんだけど」
「電話、間一髪間に合いましたね。電車乗ってたら誘えなかったもんな」
わたしが言いかけると、高林くんが被せて言った。
「え、ああ、そうね」
電車というより、あと数秒遅かったらわたしは改札の向こうだったから、誘われても断ったと思う。
「それにしても、朝、あれから席についてすぐ留守電聞いて、マジびびりましたよ。あんな切羽詰まった海野さんの声、聞いたことなかったし。あらためて、ほんとすいません」
いつもの元気いっぱいな高林くんとは思えないほどしおらしく頭を下げる彼を見て、
「わたしこそ、冷たくしてごめんなさい」
わたしも慌てて謝った。そのとき、
「あの、えっと、お待たせしました……」
頭上からの声に顔を上げると、アルバイトらしき若い女の子がハンバーグの皿を両手に持って、立っていた。向かい合って頭を下げるわたしたちに困惑した様子で、どぎまぎした女の子がおかしくて、わたしは思わず吹き出してしまった。一方の高林くんは、「あっ、すいません!」と立ち上がり、女の子の手から皿を受け取ってペコペコしていて、それもまたおかしかった