ring ring ring
薬指の真実
 翌日、わたしは早速指輪をはめて出勤し、
 「由紀、おはよう」
 朝からパソコンにかじりついて何かを調べている由紀に、左手を掲げるように見せた。
 「あ!ちゃんとしてるな〜。岡田さんの機嫌、なおるといいね」
 指輪を外したときから心配してくれていた由紀が、うれしそうに言った。その笑顔に、きっと大丈夫、と励まされているような気がした。
 「うん」
 わたしも元気に頷いて、笑顔を返した。
 ところが、事態はそううまく運ばなかった。
 今日こそは当然、忠信さんが様子を見に来るだろうと思っていたのに、忠信さんはなかなか姿を見せない。社内にいるというのは確かなのだけれど、よほど忙しいのだろうか。彼の性格からして、忘れてしまったということは絶対にないと知っているわたしは、胸騒ぎがした。昼休みに電話をかけてみたけれど留守電につながってしまい、そのまま、折り返し電話もメールもLINEもなく、終業時間になっても音沙汰なしだった。
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